2021―少年の祭典「ボレロ」―収録を終えて

お母さんと小学生の男の子はギターで、高校生のお兄さんと妹さんはフルートで、お母さんの木琴と幼稚園のお子さんは鍵盤ハーモニカで、そして「ボレロ」で知り合ったいつもの常連さんたちは、今年もトランペットやクラリネットで参加を…等々

10月のパート練習が始まる日の受付には、2年以上ものコロナ禍であるにも関わらず、様々な思いを胸に「ボレロ」に参加する嬉しい仲間たちの笑顔に出会え、制作スタッフの心にも緊張が増していました。

昨年同様、感染対策を充分に心掛けて楽器毎に密を避けてパート練習を計画し、ホームページ上に告知し、またチラシが小学校、中学校に配布されると、予想以上の反応が有り、事務局を担うスタッフの期待もいつも以上に高まっていました。また今年はプログラムに吹奏楽で「アフリカンシンフォニー」と「花は咲く」のコーラスを加え、合奏や合唱する楽しみが一際増した様に思います。

3部構成の第1部は「アフリカンシンフォニー」。この「ボレロの」取り組みが始まった当初から、たくさんの中学生を引率されて参加して下さった、酒井克久先生を指揮者にお迎えして「アフリカンシンフォニー」の稽古が始まり、練習を重ねる度に先生の熱い音楽への想いが演奏者のみなさんの音に重なり、本番はカルッツかわさきの大ホールに高らかに響き渡りました。

やがて舞台上はボレロへと大転換の為みんなが一斉に動き出しました。第2部は「ボレロ」。

本番収録に向かい無観客のホールには老若男女が集まってきました。いつもの様に客席中程には仮設の指揮台が置かれ、一度限りのリハーサルの後、静まり返ったホールにスネアドラムの鼓動が流れ出すと、石ころを握りしめてお母さんの側でじっと出番をまつ子供たち、鍵盤ハーモニカでリズムを刻むその時を今か今かと指揮台に立つ私の示す棒の先を見つめているこどもたち、そして舞台上には弦楽器、管楽器奏者の胸の高鳴りを秘めて、あのリズムとメロディーが絶え間なく反復され、スペイン語で歌うコーラスの声がそのどれをも優しく包み込み、一体となって最後のタクトが振り下ろす瞬間へと一気に流れ込んでゆくみんなのエネルギーを感じていました。

収録が無事終わると会場の空気はホッとする和やかさに変わりました。

3部は「花が咲くの」コーラス。コンサートの最後には、新型コロナ感染症で亡くなられた大勢の方々の、そして10年を迎える東日本大震災で犠牲になられた方々の魂に祈りを捧げ、「花が咲く」のコーラスを歌い心温かなハーモニーがフィナーレを飾って、今年も収録による「ボレロ」は無事終わることができました。

この「ボレロ」の取り組みが36年に亘り続けてこられた所以は、「ボレロ」のリズムやメロディーの一節一節が人々の心を魅了し、心に火を灯し感動を味わいたいと思う一人一人の努力が今日迄大切に受け継がれてきたからではないかと改めて感じています。そして迎える2022年こそたくさんの観客と共に生命を謳歌する「ボレロ」になることを願ってやみません。

次回また「ボレロ」でお会いしましょう!お疲れ様でした!  

  ボレロ指揮  安部順子

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